法人を設立するにあたって、定款(ていかん)を作成する必要があります。定款は、法人の基本情報や運営規約を明記するもので、それら規約は法人の発起人らで立案します。原案がまとまれば、次に電子定款の作成を自分でおこなうのか、または委託するのかを決めなくてはなりません。 そこで今回は、定款の基礎知識・電子定款を自分で作成する場合の手順・定款の作成や、申請を委託した場合のメリットなどについてご紹介します。
1. 定款の基礎知識
株式会社・社団法人・財団法人を設立するにあたり、「会社法」で求められるのが定款の認証です。株式会社の定款認証には、2022年9月現在、以下の手数料がかかります。
・資本金が100万円未満の場合は、3万円
・資本金が100万円以上300万円未満の場合は、4万円
・上記以外の場合は、5万円
なお、一般社団法人・一般財団法人の手数料は、5万円です。また、持分会社(合同会社・合資会社・合名会社)においても、登記申請など行政機関での各種申請手続きで定款が必要です。 定款には、3つの記載事項が定められており、法人の形態によって記載事項が異なります。「絶対的記載事項」は、法人の商号・所在地・事業目的・発起人の氏名と住所・資本金額などを明記し、「相対的記載事項」や「任意的記載事項」では、法人の運営が円滑におこなえるよう、さまざまな規約を記載できます。
2. 電子定款を自分で作成する手順
紙の定款には、収入印紙代として4万円かかりますが、電子定款においては不要です。その分節約できるので、電子定款を作成する法人が増加しています。また、電子定款を自分で作りたいという声も聞かれますので、その手順を以下に説明します。
2-1. Wordなどで原案を作成する
定款の書式は、会社の形態や人数によって異なるので注意が必要です。株式会社の場合、株主や取締役が1名なのか複数なのか、また取締役会設置の有無によって、6つの書式パターンにわかれます。同様に、持分会社でも、社員・業務執行社員・代表社員の人数によって異なります。 書式を確認したら、発起人全員が同意するよう定款の原案を策定していきましょう。次に、原案を公証役場でチェックしてもらい、事前協議をしながら原案を完成させていきます。原案の修正や加筆は、作業性のいいWordでおこない、完成したらPDF形式へ変換するのがよいでしょう。
2-2. マイナンバーカードと電子証明書を取得する
PDF形式の電子定款には、Adobe Acrobat DCなどの「Self-SignデジタルID」で、電子署名を追加する必要があります。それには、マイナンバーカードと電子証明書が必要です。住民票がある市区町村の役所で、電子証明書新規発行申請書を記入し、マイナンバーカードとともに提出します。電子証明書は、マイナンバーカードのICチップの中に格納されます。
2-3. ICカードリーダライタを購入する
ICカードリーダライタは、電子証明書を読み込むための機器で、ここでは公的個人認証に対応した機種が必要です。また、読み取り方式の違いにより、ICカードを挿入して読み取る接触型や、かざして読み取る非接触型・両者の方法が可能な共用型の3タイプがあります。
2-4. 電子定款に電子署名を追加する
まず、法務省のホームページから「電子署名プラグインソフト」をダウンロードしておきます。次に、ICカードリーダライタで電子証明書を読み取り、電子署名プラグインソフトでPDF形式の電子定款に電子署名を追加します。最後に、法務省のオンライン申請をおこない、受理してもらえれば定款認証の完了です。
3. 定款作成・申請の委託先
定款作成の委託先として挙げられるのが、行政書士と司法書士ですが、両者はどの分野をカバーしているのでしょうか。 行政書士は、定款作成業務の専門ですが、法務局への登記申請はできません。一方、司法書士は、法務局での申請代理業務が専門で、しかも定款作成の代行も可能です。 定款の原案にどのような内容を盛り込むかなどアドバイスが必要な場合は行政書士、登記申請も一括で委託したいのであれば司法書士、といえるでしょう。しかし、どちらを利用するかについては、費用や契約内容についてもよく検討してみる必要があります。
4. 定款作成・申請を委託するメリット
行政書士や司法書士に電子定款の作成や申請を委託すれば、さまざまなメリットが発生し、スムーズに手続きを進められます。
4-1. 時間と労力が節約できる
電子定款を自分で作成するには、Adobe Acrobat DCをパソコンにインストールしたり、ICカードリーダライタを準備したりしなくてはいけません。また、マイナンバーカードに、電子証明書を記録してもらうために役所へ出向いたり、何度も公証役場へ行ったりする必要があります。 公証人と原案を完成させるための事前協議をおこなったり、認証された電子定款を、USBメモリやDVDなどの外部記憶媒体にコピーしたりするためです。これらの手間を考えると、やはり電子定款の作成や申請を委託したほうが、より効率的といえるのではないでしょうか。
4-2. 定款原案を不備なく効率的に作成できる
定款原案の内容に不備や記入漏れがあった場合、修正作業や再申請が必要になり、その都度公証役場へ出向くことになり、非効率的です。一方、企業法務や法律の知識が豊富な行政書士などにチェックしてもらえれば、それらの無駄を省けます。また、定款の原案に盛り込むべき内容などのアドバイスも受けられれば、効率的に短時間で、原案を完成させられるでしょう。
4-3. 法人設立までの期間を大幅に短縮できる
電子署名を追加するなどの電子定款の取扱いや、各種申請業務の豊富な経験があるので、迅速に手続きを進められます。最短の場合、株式会社で2日後、合同会社なら翌日の認証済み電子定款の受け渡しが可能です。
5. まとめ
より多くの経験を積むため、電子定款の作成に挑戦される人は少なくありません。電子定款を作成するには、専用のソフトや機器を準備したり、市区町村役所や公証役場に幾度か出向いたりするなど多くのステップがあります。かなりの時間と労力も要します。もし起業に向けて多忙なのであれば、行政書士や司法書士に電子定款の作成・申請を委託して、法人設立を効率的におこなうことが得策といえるでしょう。
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